私自身、臨床検査技師の国家資格を持っているので、妊婦健診の血液検査って、どんな意味があるんだろ?
という疑問は持ちません。
特に専門分野なので。
つまり、調べたりしないということ。
でも、このブログを書くためにいろいろと調べたんです。
でもね、どれもわかりにくい!
「医師監修」とか書かれてる記事って、そりゃお医者さんが言ってることだから正しいんだろうけど、
言ってることが難しくないかい?
その検査方法違うよ?
というのもある。
だから、私も医療従事者のはしくれなので、一般の方でもわかりやすく説明できたらいいなと思い、書いていきたいと思います。
血液のはたらきって?
まず血液の働きについて。(小学校の理科レベルの話です)
血液は、心臓のポンプの働きで送り出され体の各部分を巡り再び心臓に戻る。
血液は、1日に何度も体内を巡りながら体の各部分に酸素や栄養分を渡し、二酸化炭素や体内でできた老廃物を受け取っている。
心臓から肺へ送られた血液は、肺で二酸化炭素を出し酸素を受け取る。
そして心臓に戻って再び体の各部分に送り出される。
血液が全身を流れる中で体の各部分で不要になったものが血液に入る。
体内でできた不要なものは血液で腎臓に運ばれる腎臓では不要なものが水とともにこし出され、尿ができる。
尿は、しばらく膀胱に貯められその後、体外に出される。
これが、私たちの体の中で起きていること。
難しいことはわからないけど、血液って、体の中の情報をいろいろ持ってそう!
そうなんです!
実際、血液にはたくさんの情報が含まれていて、その血液を調べる項目も非常にたくさんあります。
妊娠すると母親と胎児の関係はどうなる?
まず、妊娠すると胎盤ができますよね。
胎盤って、そもそも何なのでしょう。
胎盤とは、母親の毛細血管と胎児の毛細血管が集まっていて、ここで物質の交換が行われる。
何だよ、物質って!!
- 母親→胎児 酸素と栄養分
- 胎児→母親 二酸化炭素と不要物
妊娠すると、血液は胎盤を介して、母親から胎児に酸素や栄養分を送り、胎児から母親に二酸化炭素や不要物を受け取ります。
このやり取りが行われているのが、へその緒なんですよね。
へその緒→胎盤と胎児を繋いでいる。中を通る血管の中の血液を通して胎児と胎盤の間を物質が移動する。
つまり、妊婦さんの血液は、胎児に酸素や栄養分を与えたりする大切な役割をになっているんです。
例えば、私は喘息を持っているのですが、喘息患者は妊娠中も普段服用している薬を止めません。
なぜなら、喘息の発作が起き、母親が酸素不足になると、胎児も酸素不足になるから。
赤ちゃんも苦しいわけですね。
ですから、血液の成分が良くないと、胎児にも影響が出る可能性があるということなんです。
だから、血液検査をするんですね。
妊婦健診での血液検査の回数
私の場合、妊婦健診での血液検査の回数は、初期、中期、後期の3回でした。
周りの知り合いに聞いても、たいていの人が2~4回の間におさまっていました。
妊娠初期に1回、妊娠中期・後期に1回受ける人が多いようです。
貧血や糖尿病などの場合、血液検査を何度か受けて経過を観察してくため、一般的な回数より多くなります。
妊婦健診で血液検査を受ける理由
なぜ妊婦健診で血液検査を受けるのでしょう?
それは、母親の血液に異常がないかを調べるため。
たまにね、妊娠初期の妊婦さんが、
半年前に血液検査して、問題ないって言われました。それでも受けないといけないの?
と聞かれることもあるんです。
受けてください
血液検査を受けた半年前は、妊娠してませんよね?
妊娠中って、短期間で身体が大きく変化していくんです。
定期的に血液検査を受けていて、何の異常もない人だって、いつもと同じ生活をしていても、身体の中も変化しているんです。
あと、通常の血液検査ではしないような項目も含まれているので、必ず受けるようにしましょう。
妊娠初期の血液検査の項目
妊娠初期の血液検査の項目には、分娩時、緊急時に対応できるようにする項目や、ひどい貧血や糖尿病などのリスクがないかを調べる項目が含まれています。
血液型(ABO型、Rh型)
緊急時、迅速に輸血ができるようにするためや、赤ちゃんの重症黄疸の予測のために調べておきます。
梅毒血清反応検査
RPR法定性、TPLA定性は梅毒の検査です。
梅毒とは、性感染症のひとつです。
知らない間に梅毒にかかっていることもあります。
感染時期により、流産・早産・死産・先天性梅毒児になることがありますが、きちんと抗生物質で治療すれば、胎児に感染せずに出産ができます。
風疹
妊娠初期に感染すると、心奇形・先天性白内障・難聴という先天性異常の赤ちゃんが生まれることが多くなります。
風疹の抗体がない場合は、妊娠前に予防接種を受ける必要があります。(妊娠中は受けることができません)風疹の抗体価が基準値以下の場合、”抗体がない”または”少ない”ということです。
つまり風疹に感染する可能性があることを意味します。
B型肝炎ウィルス(HBs抗原)
肝炎の症状がなくても、抗原をもっているB型肝炎キャリア、ということがあります。HBs抗原陽性の人は、さらにHBe抗原と抗体を調べます。
HBe抗原陽性の場合、胎児への感染力は強くなります。
出産後、赤ちゃんの検査を行い、ガンマグロブリンやワクチンを注射して、感染を防ぎます。
間違いに注意!!
B型肝炎の検査について間違って記載しているサイトが見られます。
”医師監修””助産師監修”と書かれていたり、医療施設のホームページでも間違っているものがありました。
私も驚きました。
「HBs抗体検査をしたらB型肝炎に感染しているかわかります」
「出産時や出産後にB型肝炎ウィルスに感染することを防ぐため、抗体があるかを調べます」
という内容です。
これね、間違っているんです。
HBs抗体が陽性だと、過去にHBV(B型肝炎ウィルス)に感染し、その後治ったことを示します。
B型肝炎ワクチンを接種した場合にも陽性になります。
難しいですよね。とにかく、B型肝炎ウィルスに感染しているかどうかを調べるのはHBs抗原ということです。
えっ、お医者さんももわかってないの?
正しく検査されていないんじゃない?
と思われるかもしれませんが、残念ながら医師はオールマイティーではないということです。
産科の医師は産科のプロですが、他の疾患のことは詳しくない場合もあります。
検査項目を間違っているということはおそらくないと思います。
検査の指示を出す時は、その病院独自の”妊婦健診初期セット項目”のような名前がついたセットが組まれていると思いますので大丈夫です。
心配な方は、検査結果の項目が「HBs抗原」になっているかをチェックしてみるといいでしょう。
C型肝炎
胎児への感染力は弱いですが、感染している場合、定期的に肝機能検査をする必要があります。
HTLV-1
HTLV-1はヒトT細胞白血病ウィルスの略です。
感染している母親から赤ちゃんへ感染する主な原因は母乳です。
赤ちゃんへの感染を防ぐために、あらかじめ母親が感染していないかを検査します。
HIV
AIDs(エイズ:後天性免疫不全症候群)の原因になるウイルスのことです。
赤ちゃんに感染する可能性も高いです。
血算(血球算定)
白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHC、血小板数などの項目があります。
注目して見るのは、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、血小板数でいいと思います。
白血球数
感染や炎症が起きていると高値になります。数値が基準値を外れている場合、まれに細菌感染症や白血病などの場合があるため検査します。
赤血球数 ・ヘモグロビン
赤血球の赤色は、ヘモグロビンというたんぱく質で、肺で酸素と結びついて血流に乗って全身の組織に酸素を運びます。
赤血球数やヘモグロビンが少ない場合が貧血です。
少し数値が低いくらいなら症状がないことも多いです。
貧血が進むと、動機や息切れ、疲れやすいなどの症状が出てきます。
酷い場合は、胎児の成長に影響が出ることもあります。
血小板数
血小板が少ないと、出血しやすく血が止まりにくくなります。
分娩時は必ず出血するので、病的な場合は治療が必要となります。
採血された血液はどこへ行く?
採血された血液は、個人病院なら臨床検査センターという検体検査(検体とは、血液、尿、便等、身体から摂取したもの)を専門に扱っている機関が回収に来てくれます。
そして、検査センターで検査されます。
総合病院などの大きな病院は、院内に臨床検査室があり、院内で検査ができます。
体調が悪くて、小規模の診療所やクリニックへ行って血液検査をしても、すぐに結果は出ませんよね。
それは、血液検査を外注しているからなんです。あっ、簡単な尿検査(尿糖、蛋白など)なら、試験紙で30秒ほどで出るのでクリニックでも結果がでます。
尿検査の試験紙は、ドラッグストアでも販売していますよ。妊娠検査薬と同じような方法で検査できます。
妊婦健診の血液検査の費用
妊婦健診の血液検査の負担額は大きくなります。
とくに、妊娠初期の検査は、感染症の検査などもあり、費用が高くなることが多いです。自己負担額は、1万円~2万円が相場。
私が住んでいる自治体では、妊婦健康診査受診券+補助券で12万円近く補助をしてくれるので、窓口での支払いは、高くても5000円まででした。
エコーの検査も毎回ではなかったのも関係していると思います。
しかし、自治体によってどれぐらい助成してくれるかは異なってくるので注意が必要です。